6.17. GCC-6.3.0

GCC パッケージは C コンパイラーや C++ コンパイラーなどの GNU コンパイラーコレクションを提供します。

概算ビルド時間: 82 SBU (テスト込み)
必要ディスク容量: 3.3 GB

6.17.1. GCC のインストール

x86_64 上でビルドしている場合は、64ビットライブラリのデフォルトディレクトリ名をlibにします。

case $(uname -m) in
  x86_64)
    sed -e '/m64=/s/lib64/lib/' \
        -i.orig gcc/config/i386/t-linux64
  ;;
esac

GCC のドキュメントによると GCC のビルドにあたっては、専用のビルドディレクトリを作成することが推奨されています。

mkdir -v build
cd       build

GCC をコンパイルするための準備をします。

SED=sed                               \
../configure --prefix=/usr            \
             --enable-languages=c,c++ \
             --disable-multilib       \
             --disable-bootstrap      \
             --with-system-zlib

他のプログラミング言語は、また別の依存パッケージなどを要しますが、現時点では準備できていません。 GCC がサポートする他のプログラム言語の構築方法については BLFS ブック の説明を参照してください。

Configure パラメーターの意味:

SED=sed

ハードコーディングされているパスを /tools/bin/sed とするために、環境変数を設定します。

--with-system-zlib

このオプションはシステムに既にインストールされている Zlib ライブラリをリンクすることを指示するものであり、内部にて作成されるライブラリを用いないようにします。

パッケージをコンパイルします。

make
[重要項目]

重要項目

本節における GCC のテストスイートは極めて重要なものです。 したがってどのような場合であっても必ず実行してください。

GCC テストスイートの中で、スタックを使い果たすものがあります。 そこでテスト実施にあたり、スタックサイズを増やします。

ulimit -s 32768

コンパイル結果をテストします。 エラーが発生しても停止しないようにします。

make -k check

テスト結果を確認するために以下を実行します。

../contrib/test_summary

テスト結果の概略のみ確認したい場合は、出力結果をパイプ出力して grep -A7 Summ を実行してください。

テスト結果については http://www.linuxfromscratch.org/lfs/build-logs/8.0/http://gcc.gnu.org/ml/gcc-testresults/ にある情報と比較することができます。

テストに失敗することがありますが、これを回避することはできません。 GCC の開発者はこの問題を認識していますが、まだ解決していない状況です。 特に今行っているように root ユーザーにてテストを実施すると libstdc++ に関するテストが5つ失敗します。 上記の URL に示されている結果と大きく異なっていなかったら、問題はありませんので先に進んでください。

パッケージをインストールします。

make install

FHS の求めるところに応じてシンボリックリンクを作成します。 これは慣例によるものです

ln -sv ../usr/bin/cpp /lib

パッケージの多くは C コンパイラーとして cc を呼び出しています。 これに対応するため、以下のシンボリックリンクを作成します。

ln -sv gcc /usr/bin/cc

リンク時の最適化 (Link Time Optimization; LTO) によりプログラム構築できるように、シンボリックリンクを作ります。

install -v -dm755 /usr/lib/bfd-plugins
ln -sfv ../../libexec/gcc/$(gcc -dumpmachine)/6.3.0/liblto_plugin.so \
        /usr/lib/bfd-plugins/

最終的なツールチェーンが出来上がりました。 ここで再びコンパイルとリンクが正しく動作することを確認することが必要です。 そこで本節の初めの方で実施した健全性テストをここでも実施します。

echo 'int main(){}' > dummy.c
cc dummy.c -v -Wl,--verbose &> dummy.log
readelf -l a.out | grep ': /lib'

問題なく動作するはずで、最後のコマンドから出力される結果は以下のようになるはずです。 (ダイナミックリンカーの名前はプラットフォームによって違っているかもしれません。)

[Requesting program interpreter: /lib64/ld-linux-x86-64.so.2]

ここで起動ファイルが正しく用いられていることを確認します。

grep -o '/usr/lib.*/crt[1in].*succeeded' dummy.log

上のコマンドの出力は以下のようになるはずです。

/usr/lib/gcc/x86_64-pc-linux-gnu/6.3.0/../../../../lib/crt1.o succeeded
/usr/lib/gcc/x86_64-pc-linux-gnu/6.3.0/../../../../lib/crti.o succeeded
/usr/lib/gcc/x86_64-pc-linux-gnu/6.3.0/../../../../lib/crtn.o succeeded

作業しているマシンアーキテクチャーによっては、上の結果が微妙に異なるかもしれません。 その違いは、たいていは /usr/lib/gcc の次のディレクトリ名にあります。 注意すべき重要な点は gcccrt*.o という三つのファイルを /usr/lib 配下から探し出しているということです。

コンパイラーが正しいヘッダーファイルを読み取っているかどうかを検査します。

grep -B4 '^ /usr/include' dummy.log

上のコマンドは以下の出力を返します。

#include <...> search starts here:
 /usr/lib/gcc/x86_64-pc-linux-gnu/6.3.0/include
 /usr/local/include
 /usr/lib/gcc/x86_64-pc-linux-gnu/6.3.0/include-fixed
 /usr/include

もう一度触れておきますが、プラットフォームの三つの組 (target triplet)の次にくるディレクトリ名は CPU アーキテクチャーにより異なる点に注意してください。

[注記]

注記

GCC のバージョン 4.3.0 では limits.h ファイルを無条件に include-fixed ディレクトリにインストールします。 したがってそのディレクトリは存在していなければなりません。

次に、新たなリンカーが正しいパスを検索して用いられているかどうかを検査します。

grep 'SEARCH.*/usr/lib' dummy.log |sed 's|; |\n|g'

'-linux-gnu' を含んだパスは無視すれば、最後のコマンドの出力は以下となるはずです。

SEARCH_DIR("/usr/x86_64-pc-linux-gnu/lib64")
SEARCH_DIR("/usr/local/lib64")
SEARCH_DIR("/lib64")
SEARCH_DIR("/usr/lib64")
SEARCH_DIR("/usr/x86_64-pc-linux-gnu/lib")
SEARCH_DIR("/usr/local/lib")
SEARCH_DIR("/lib")
SEARCH_DIR("/usr/lib");

32ビットシステムではディレクトリが多少異なります。 以下は i686 マシンでの出力例です。

SEARCH_DIR("/usr/i686-pc-linux-gnu/lib32")
SEARCH_DIR("/usr/local/lib32")
SEARCH_DIR("/lib32")
SEARCH_DIR("/usr/lib32")
SEARCH_DIR("/usr/i686-pc-linux-gnu/lib")
SEARCH_DIR("/usr/local/lib")
SEARCH_DIR("/lib")
SEARCH_DIR("/usr/lib");

次に libc が正しく用いられていることを確認します。

grep "/lib.*/libc.so.6 " dummy.log

最後のコマンドの出力は以下のようになるはずです。

attempt to open /lib/libc.so.6 succeeded

最後に GCC が正しくダイナミックリンカーを用いているかを確認します。

grep found dummy.log

上のコマンドの出力は以下のようになるはずです。 (ダイナミックリンカーの名前はプラットフォームによって違っているかもしれません。)

found ld-linux-x86-64.so.2 at /lib/ld-linux-x86-64.so.2

出力結果が上と異なっていたり、出力が全く得られなかったりした場合は、何かが根本的に間違っているということです。 どこに問題があるのか調査、再試行を行って解消してください。 最もありがちな理由は、スペックファイルの修正を誤っていることです。 問題を残したままこの先には進まないでください。

すべてが正しく動作したら、テストに用いたファイルを削除します。

rm -v dummy.c a.out dummy.log

最後に誤ったディレクトリにあるファイルを移動します。

mkdir -pv /usr/share/gdb/auto-load/usr/lib
mv -v /usr/lib/*gdb.py /usr/share/gdb/auto-load/usr/lib

6.17.2. GCC の構成

インストールプログラム: c++, cc (gcc へのリンク), cpp, g++, gcc, gcc-ar, gcc-nm, gcc-ranlib, gcov
インストールライブラリ: libasan.{a,so}, libatomic.{a,so}, libgcc.a, libgcc_eh.a, libgcc_s.so, libgcov.a, libgomp.{a,so}, libiberty.a, libitm.{a,so}, liblto_plugin.so, libquadmath.{a,so}, libssp.{a,so}, libssp_nonshared.a, libstdc++.{a,so}, libsupc++.a, libtsan.{a,so}
インストールディレクトリ: /usr/include/c++, /usr/lib/gcc, /usr/libexec/gcc, /usr/share/gcc-6.3.0

概略説明

c++

C++ コンパイラー

cc

C コンパイラー

cpp

C プリプロセッサー。 コンパイラーがこれを利用して、ソース内に記述された #include、#define や同じようなステートメントを展開します。

g++

C++ コンパイラー

gcc

C コンパイラー

gcc-ar

ar に関連するラッパーであり、コマンドラインへのプラグインを追加します。 このプログラムは「リンク時の最適化 (link time optimization)」機能を付与する場合にのみ利用されます。 デフォルトのビルドオプションでは有効にはなりません。

gcc-nm

nm に関連するラッパーであり、コマンドラインへのプラグインを追加します。 このプログラムは「リンク時の最適化 (link time optimization)」機能を付与する場合にのみ利用されます。 デフォルトのビルドオプションでは有効にはなりません。

gcc-ranlib

ranlib に関連するラッパーであり、コマンドラインへのプラグインを追加します。 このプログラムは「リンク時の最適化 (link time optimization)」機能を付与する場合にのみ利用されます。 デフォルトのビルドオプションでは有効にはなりません。

gcov

カバレッジテストツール。 プログラムを解析して、最適化が最も効果的となるのはどこかを特定します。

libasan

アドレスサニタイザー (Address Sanitizer) のランタイムライブラリ。

libgcc

gcc のランタイムサポートを提供します。

libgcov

GCC のプロファイリングを有効にした場合にこのライブラリがリンクされます。

libgomp

C/C++ や Fortran において、マルチプラットフォームでの共有メモリ並行プログラミング (multi-platform shared-memory parallel programming) を行うための、GNU による OpenMP API インプリメンテーションです。

libiberty

以下に示すような数多くの GNU プログラムが利用する処理ルーチンを提供します。 getoptobstackstrerrorstrtolstrtoul

liblto_plugin

GCC のリンク時における最適化 (Link Time Optimization; LTO) プラグイン。 コンパイルユニット間での最適化を実現します。

libquadmath

GCC の4倍精度数値演算 (Quad Precision Math) ライブラリ API

libssp

GCC のスタック破壊を防止する (stack-smashing protection) 機能をサポートするルーチンを提供します。

libstdc++

標準 C++ ライブラリ

libsupc++

C++ プログラミング言語のためのサポートルーチンを提供します。

libtsan

スレッドサニタイザー (Thread Sanitizer) のランタイムライブラリ。